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調査・研究・普及啓蒙を目的としています

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教育効果測定の基本コース 開催終了

レポート:学習分析学会 副理事長 堤宇一

「教育効果測定の基本コース 2日間編(9/8&9)」を開催いたしました。本コースを担当しました堤が当日の活動をレポートさせていただきます。今回は偶然にも、全参加者が「人材育成に携わる典型的特徴(※)」を強く持つキャラクターの持ち主という、ユニークな会となりました。 ※人材育成に携わる典型的特徴(キャラクター):他者への同情心や思いやる気持ちが高い(高すぎる懸念が強い)。事よりも人に傾注する傾向が強く、人と事を分けて考えるのがあまり得意でない。可哀想、私がどうにかしてあげなければという“感情”が先に発動される。他者の顔色や語気、振舞など読み取るノンヴァーバル分野における能力は素晴らしい。反面、自分の考えや結論を導いた過程などを、言葉を駆使し論理的に伝える事が得手でない。特に、クリティカルシンキング(建設的批判思考)が弱い。人柄は、人当たりがソフトで優しい。しかし一つ一つ事実を検証・分析し、理論やフレームワークを用いて客観的に真偽を探索する事は苦手である。(上記の特徴説明は、堤が永年人材育成に携わり、多くの日本企業の人事・能力育成担当やヒューマンスキル系の講師と仕事をし、友達になり感じている個人的な経験則です)
■様々な悩みを抱えた参加者の皆さん
参加者相互の理解、講師として参加動機を確認するために、全参加者に自己紹介をしていただきます。今回も多様な課題を抱えた方々に参加いただきました。代表的な課題として以下のような事が発言されていました。 ・上司が人材育成に関する理論を知らない上に、人材育成自体に関心が無く、研修を提案しても「いくら儲かる」「効果はなんだ」という会話になり、上手くコミュニケーションが取れない。 ・お客様から研修の効果測定をやりたいと言われる。実際に職場にインタビューやデータを取るための活動を提案すると、「それは出来ない」と言われる。効果測定の方法を知らない当方にも問題はあるが、お客様自体が本当にやりたいのか、その真意がつかめない。 ・教育効果測定を実施している。しかし、本当にこのやり方に妥当性や科学的な信頼性があるのか不安である。 多様で根深い課題が、自己紹介を通じて理解することが出来ました。
■教育効果測定の理論の理解
教育効果測定で測ろうとしている「教育効果」は心理現象(概念)であり、物理現象ではありません。ここで重要なことは、測定したい概念をキチンと定義する事です。専門用語では“構成概念の定義化”と呼びます。事例や具体例を交え講義を展開しました。また、教育効果を測定するためには明確なゴール設定は欠かすことが出来ません。インストラクショナルデザインの知見である「学習目標の明確化」を様々な例を用いながら演習を実施しました。なかなか明確な学習目標を作成できず苦労しておられました。普段の研修で充分に吟味しないまま研修が提供されている実態を垣間見たように感じました。
■事例を通して理論の活用ポイントを掴む
2日目の総合演習は、1日目に学んだ原理原則を実際の場で適用できるように、実践でのポイントやコツつかむ事が狙いです。総合力強化の演習として、3つの事例演習を実施しました。 事例演習では、求められるアウトプットを作成できないチームもありました。達成できなかったチームメンバー一人一人に確認したところ、初日に学んだ理論の理解は完璧ではないものの、演習実施に支障が出るような酷いレベルでもありませんでした。チーム活動に注意を払い観察すると不達成の重大な原因が見つかりました。一言でいうと「グループ討議の仕方を知らない」です。指示された課題を確認し、アウトプットイメージを摺り合わせ、ゴールを設定する。そして、演習時間を「個人検討」「討議」「アウトプット製作」などに適切に割振り、ディスカッションを進める。そして議論が主題から外れたらメンバーの誰かが、指摘し正しい道へ戻るという基本ルールやマナーを誰も用いていない状態でした。誰かの枝葉末節な指摘を、他の誰も指摘せず、全員で話はじめ、ずるずると深みに入り、気がつけば演習時間を使い果たす。 本コースの参加への前提条件として「グループ討議が出来ること」「他者の言動に適切なフィードバックが出来、建設的なミーティングが出来ること」を追加しなければいけないのか…、少し暗い気持ちになりました。
■参加者の皆さんに望むこと
今回の参加者の皆さんは、人材育成に携わる典型的特徴(キャラクター)の持ち主ばかりでした。言葉を定義し、それを正解に定義通りに用いることを、あまり得意としない方々ばかりでした。本コースの学習目標をキチンと達成した参加者もありますが、残念ながら参加者の一部の方は、教育効果のレベル定義や学習目標の明確化の仕方といった重要点を理解したつもり(不十分な状況)の段階で留まっておられます。 是非学んだことを実践の場で試し「分かったつもりの状態」なのか、「正確に分かっている」のかをチェックいただきたいと思います。 職場にはコーチはいません。活動に巻き込み一緒に進める相手の中には、効果測定の理論を学んだ方は一人もいません。そのような環境下で進める活動は相当な覚悟と努力を必要とします。今回の苦しかった学習活動が、少しでも皆さんのプロジェクトに役立つことを願っています。

以上

開催日 2016年09月08日(木) 10:00~18:00
開催概要  本コースは、産業人を対象とするトレーニングの効果、測定方法に関する「基礎理論の理解」と「調査計画書の作成方法の習得」を目指します。
 初日は、教育効果測定の基本理論や実施手順、効果を出すための研修設計のポイントを講義、グループ演習を通じて理解していただきます。二日目は、初日の学習内容を実践に活かせるよう3つの事例演習を行います。教育効果測定の調査活動全体の具体的イメージを掴んでいただきます。

【開催日時】
 1日目:2016年9月8日(木) 10:00-18:00  (開場9:30)
 2日目:2016年9月9日(金) 09:30-17:00

【学習項目】
<1日目:教育効果測定の基礎理論>
Ⅰ.教育効果測定の理屈を知る
 1)教育効果測定の実施目的
 2)教育効果の分類
 3)教育効果測定の基本的精神と必要な技術
 4)教育効果測定の実施手順
 ※理解度テスト

Ⅱ.学習目標を明確化する
Ⅲ.学習成果を分類する

<2日目:教育効果測定の調査計画書作成>
Ⅳ.教育効果測定の概要設計書を作る(3演習)
 1)通信教育事例
 2)eラーニング事例
 3)集合研修事例

【参考書籍】
『はじめての教育効果測定‐教育研修の質を高めるために』 ¥3,400(税別)
 堤宇一(編著)、青山征彦(著)、久保田享(著) 日科技連出版社

【写真等記録情報の使用許諾のお願い】
 小会では、広報活動及び会員サービスの向上に活用するため、ビデオ撮影、音声収録、写真撮影、受講アンケートを実施しています。これら映像、音声、画像、コメント(以下、記録情報)は、小会の関わるWebコンテンツ及び紙媒体の配布資料等に活用させていただく可能性があります。
 小会活動へのご参加は、記録情報の活用にご承諾いただけたものとさせていただきます。
学習目標 ■教育効果測定の基本的考え方「教育効果測定の実施目的」「教育効果のレベル」「教育効果測定の実施に必要な技術」「教育効果測定の実施手順」の4点を理解し、教育効果を4つのレベルに分類できるようになる。

■研修設計で鍵となる「学習目標」と「学習成果」について学習し、学習目標の明確化の方法と重要性を説明できるようになる。

■効果測定実施のための概要計画を、事例に当てはめ立案できるようになる。
参加対象者 本コースは、以下に挙げる方々を主たる対象として企画されています。
 ■人材育成に携わり3年以上の経験を有し、自分で研修企画を行っている方。
 ■人材育成に携わり3年以上の経験を有し、研修プログラムを社内導入するための決定権を有する方。
 ■教育ベンダー会社に所属し、研修開発に携わっていらっしゃる方。 
講師 NPO法人学習分析学会 副理事長 堤宇一氏
会場 明治大学 駿河台校舎 紫紺館 S4会議室
千代田区神田小川町3-22-14
https://www.meiji.ac.jp/koyuka/shikonkan/copy_of_shikon.html
定員 16名(※最低開催人数:4名)
開催1週間前までにお申込人数が、最低開催人数に満たない場合は、中止とさせていただきます。 予めご了承ください。
参加費 ■会員:35,000(税込)   ■非会員:40,000(税込)
■再受講(会員&非会員):10,000(税込)
 ※再受講とは、「繰り返し学習」を支援するための制度です。以前受講したセミナーを、さらなる理解を目的に繰り返し受講することをさします。
 ※再受講参加者は、ティーチングアシスタントとして、初学者の参加者の学習サポートにご協力ください。他者の学習をサポートすることで、より深い学びを実現する事ができます。
 ※再受講希望の方は、申込フォームのコメント欄に「再受講」とご入力ください。
支払い方法と領収書発行 ■支払方法:当日会場受付時に現金支払を原則とします。
■領収書発行:領収書をご要望の方は、お申し込みの領収書欄に「宛名」をご入力ください。入力いただきましたお宛名で用意いたします。
キャンセルについて 申込後のキャンセルは、早めにご連絡ください。(連絡先:info@jasla.jp)
開催の5日前より以下のキャンセル料金が発生いたします。なお、キャンセル料に関しては、後日請求となります。
 ・開催5日前~3日前のキャンセル料は、参加料の50%
 ・開催2日前~当日のキャンセル料は、参加料の100%
 ・連絡なしの不参加は、参加料の100%