本学会は、Learning Analyticsに関する
調査・研究・普及啓蒙を目的としています

  • HOME
  • >
  • イベント情報

初学者のためのインストラクショナルデザイン入門コース

「初学者のためのインストラクショナルデザイン入門コース」実施レポート

 

活動レポート:学習分析学会 副理事長 堤宇一

 

 本年度(2019年4月)より、「インストラクショナルデザイン基礎セミナー」はアルー社との共同開催で運営している。そのことは、以前、わずかだった階層別教育(新規入社者を対象とする教育、年次別対象者への教育、新任管理職研修など)を専従にする人材育成担当者の方々の参加を促す結果となった。単独開催の頃は、技術職や営業職、生産部門といったラインの人材育成を業務とする方々が中心で、彼らは人材育成を通じて業務課題を直接的に解決するという役割を担う。そのため担当者は業務内容と人材育成の双方に精通することが期待される。逆に階層別教育は、業務課題を直接解決するための研修ではないが、企業内キャリアの節目に提供され、組織ミッションの一層の理解や視座の転換、意識変化の促進等を目的に実施される施策である。講師陣に役員や事業部長などの内部関係者も加わり、運営段取りや手際にも厳しい評価の視線が向けられ、細やかな神経を期待される業務である。
 そのような業務性質の差を考慮し、従来セミナーの学習内容を軸にしながらも、展開方法や時間配分を大きく改訂し、使用ケースも新たに書下ろした。また名称も「初学者のためにインストラクショナルデザイン入門」と改めた。新セミナーの設計・教材開発・インストラクションを担当した堤が活動内容をレポートさせていただく。

 

■新セミナー開発上の留意点

 旧セミナーは、ライン人材の育成業務を念頭に設計し、発生問題の原因調査分析とそれらからの課題の洗い出しを想定している。具体的には、ケース登場人物の発言に問題意識や問題現象を含ませ、問題のカギを文脈に忍ばせ、学習者がそれらを見つけそれをもとに研修をデザインするよう組立ている。またインストラクションの要所でヒントやガイドを与え、教育ニーズと設計ポイントの理解促進を図っていく。多数の課題の中から、いくつかの重要課題に絞込み、教育施策の解決範囲とゴールを決め、それを実現する研修を企画・設計するという演習設定である。これはリアリティの高い状況設定であるが、前例踏襲型の研修業務を中心とする学習者(階層別教育の専従者)にとっては、難易度が高すぎることが一度実施して判明した。
 そのため、従来の学習内容を見直し、以下の点を留意して新セミナーを開発したのである。インストラクショナルデザイン理論の理解を確実なものにするために従来5時間で実施していた基礎理論部分の学習を3時間増やし、トータル8時間に再設計。また参加者の業務特性と思考性を加味し、演習ケースは問題点を絞り込んだ内容で書き下ろした。しかしこれでは、検討範囲や状況が安易になるため、「研修開発責任者(上司)からの要望」や「組織が掲げる生産性活動との紐づけ」「学習開始&終了時間の縛りの設定」など様々な制約条件を加え、それらを全て満たす研修を設計するという課題設定に変更して実施した。

 

■新セミナーの実施結果

 開催数日前は、3チーム編成(12名の参加予定)で準備を進めていたが、新型コロナウイルスの感染予防の影響で2名のキャンセルが発生した。最終的には、2チーム編成(10名参加)でセミナーを運営した。学習者の属性内訳は、階層別教育専任者:4名、ライン人材教育担当者:1名、学校教育関係者:1名、教育ベンダー従事者(講師含む):4名であった。
 「教育研修」は人材に関わる問題解決方法の一手段という自明の理ともいえる事項が、階層別教育の専従や教育ベンダーとして研修事業に長年係わっていると、その常識を麻痺させてしまうらしい。研修の効用と限界を再認識するためのワークで整理したアウトプットに物足りなさを感じた。日常業務として研修運営や研修開発を繰り返している内に「他の施策や方法で解決できないのか」や「そもそも教育が必要なのか」といった問いを忘れてしまうのかもしれない。
 インストラクショナルデザインの基礎理論セッションは、指導方法と学習時間を大幅変更し設計したパーツである。改訂の狙い通り基本事項は理解いただけたようだ。だが最後に実施した総合演習。具体的には、事例を読み込み、チーム単位でインストラクショナルデザイン理論をフル活用して作り込む「研修企画概要書」作成演習である。そのアウトプットは、十分に理解したと判断できるチームと、不十分さを感じるチームに分かれた。インストラクショナルデザインの理解の差というより、むしろ事例の読込の深度や研修テーマに関する下調べの差が、アウトプットのレベルの違いを生んだように感じられた。次回のセミナーでは、予習レベルがアウトプット差を生じさせることを強調し、十分な準備を促そうと思う。
 インストラクショナルデザインでは、良い研修を設計するために学習者分析の重要性を強調する。これを十分に行うことで学習者の能力レベルや経験、学習方法の好み、抱える課題に適した教育を提供できる可能性が高まるからである。 今回、学習者分析を実施し、その結果をもとにセミナー開発を進めたことが質保証につながったと感じた。

 

開催日 2020年02月20日(木) 9:30~18:30
開催概要 インストラクショナルデザイン(以下、ID)は、効果的かつ効率的な教育を設計・開発するための方法と理論です。本入門編は、はじめて社員教育や研修担当になった方、あるいは改めて研修設計の基礎理論を学びたい方を対象に企画いたしました。2日間かけてID理論の基礎と研修設計の手順を学んでいきます。
セミナー初日と2日目の午前中までは、ID理論の基本原則と研修設計の手順を講義と小演習、全体演習の体験を通して掴みます。2日目の午後は、グループで事例演習に取り組み、実務への活用ポイントを理解していきます。
なお、本セミナーは、「学習分析学会」ならびに「アルー社」との共同開催企画として運営いたします。

【開催日時】
 1日目:2020年2月20日(木) 09:30-18:30 (開場9:10)
 2日目:2020年2月21日(金) 09:30-17:10 (開場9:10)

【学習項目】
<1日目:ID理論の基本知識>
 1.パフォーマンス向上と研修(研修の効用と限界)
 2.インストラクショナルデザインの定義と研修開発の全体像
 3.インストラクショナルデザインの概要(勉強会の企画)
   ◇ニーズ分析・特定
   ◇学習目標の明確化
   ◇学習成果の分類
   ◇学習者・コンテキスト分析
   ◇評価
   ◇学習項目の構造化
   ◇学習目標の系列化
   ◇指導方略
   ◇学習時間の見積り
   ◇カリキュラム作成

<2日目:ID理論の基本知識と実践力強化>
   ◇カリキュラム作成(前日の続き)
   ◇カリキュラム発表と相互フィードバック
 4.総合演習(活用実践力の強化)
   ◇研修企画概要書の作成
   ◇発表&相互フィードバック(前半)
   ◇発表&相互フィードバック(後半)
 5.インストラクショナルデザインの活用の留意点

【参考書籍】
 「教材設計マニュアル-独学を支援するために」 鈴木克明著 北大路書房
 「教育効果測定の実践 企業の実例をひも解く」 堤宇一編著他 日科技連出版社
 ※上記書籍の閲読は、参加の前提条件ではありません。参加前の予習や参加後の復習のための参考書籍としてご紹介しております。

【写真等記録情報の使用許諾のお願い】
 小会ならびにアルー社では、広報活動及びサービスの向上に活用するため、ビデオ撮影、音声収録、写真撮影、受講アンケートを実施しています。これら映像、音声、画像、コメント(以下、記録情報)は、小会およびアルー社のWebサイトや配布資料等に活用させていただく場合がございます。本セミナーへのご参加は、記録情報の活用にご承諾いただけたものとさせていただきます。
学習目標 1. インストラクショナルデザインの中核となる考え方(ADDIEモデル、完全習得学習、学習課題のタキソノミー)や設計プロセス(学習目標、学習成果、構造化、系列化)を自分の言葉で説明できるようになる(言語情報)。
2. インストラクショナルデザインを与えられた事例に適応し、課題解決に寄与する研修を設計できるようになる(知的技能)。
3.インストラクショナルデザインを自分の企画するトレーニングに活用したくなる(態度)。
参加対象者 本セミナーは、企業内研修に関わる方々を主要対象としており、以下に示す業務経験ならびに業務権限を有していることを想定して開発されています。
以下の3条件を満たすことを参加の前提条件とします。
■ビジネスシーンで通用する「論理力(どういう前提から、どういう理由で、どのような結論を導けるのかを伝え、受けとる力)」が開発されている。
■担当研修を持ち、自身で研修の改訂活動を実施している(あるいは経験がある)。
■教育ベンダーや講師と学習内容や教育技法等について議論や指示を行っている(あるいは経験がある)。
講師 NPO法人学習分析学会 副理事長 堤宇一氏
会場 アルー株式会社 本社セミナールーム
(東京都千代田区九段北一丁目13-5 ヒューリック九段ビル2階)
定員 20名
※最低催行人数:4名。 開催1週間前までにお申込人数が、最低催行数に満たない場合は、中止とさせていただきます。また、定員になり次第、申込を締切ります。予めご了承ください
参加費 ■会員&非会員:¥50,000―(税別)
※本セミナーの参加費には、学習分析学会の会員・非会員の区分はございません。
支払い方法と領収書発行 お申込みいただいた後、アルー社より順次メールで請求書(PDF版)が送信されます。
請求書の記載内容に従い、お支払いをお願いいたします。
請求書、及び領収書の書面(原本)が必要な場合は、お申し込みフォーム最下部「その他ございましたら、ご記入ください」欄にその旨ご記入ください。
【注】申込は、アルー社申込サイトに画面遷移いたしますので、そちらの申込フォームからお申し込みください。
キャンセルについて キャンセルとは、アルー株式会社が実施する有料公開セミナーのお申し込みにおいて、お申し込みフォーム入力・内容確定・送信後、お申し込み者のご都合によりお申し込みの取り消しをすることをいい、弊社担当者に書面又はe-mailにてご連絡(キャンセルのお申し出)をいただいた時点により、以下の通り取り扱いを定めます。
・セミナー実施日前々日18時以降のご連絡 該当するセミナー参加費用の100%を請求いたします。
・セミナー実施日より14日前の18時以降のご連絡 該当するセミナー参加費用の75%を請求いたします。
・セミナー実施日より30日前の18時以降のご連絡 該当するセミナー参加費用の50%を請求いたします。

お申し込みはこちら